アスリート・競泳選手

練習効率で差をつける:水泳練習用具のメリットと使い方

水泳においてパドルやフィンといった練習用具の需要はありましたが、この数年で専用の練習用具を使うニーズがさらに増えつつあります。それには、2020年の社会的な情勢からプールに入れない時間ができた事で個別で情報収集する人が増えたり、時間的制限によって効率的な練習に注目が集まり、SNSでの情報交換が活発化したことが大きくあります。今までは施設やチームがまとめて購入していた練習道具を共有で使用をしなくなったといった時代背景のきっかけもあります。それらのきっかけが合わさって、個別で練習用具の使い方を学び、様々な形で練習用具の使用が広がりつつあります。

水泳練習用具を使う目的

練習用具を大まかに例えてしまえば、「手が大きければ、より水をたくさん掻くことが出来る」し、「足自体を大きくしてしまえば、多くの水を蹴ることができる。」これを部分的に再現するのが板状のスイムパドルであり、推進力を上げるスイムフィンです。

水泳練習用具を使うことによって各箇所に大きな力(場合によっては抵抗)を作り、手や足の動きが泳ぎにどれだけ大きな影響を及ぼすかに気付くことにつながり、それぞれの部位の動きを意識することにつながり、効率的な泳ぎのために何をすべきかという改善の連鎖へと繋げることができるのです。

以上を踏まえたうえで、水泳練習用具を使う目的は大きく分けるとするなら下記の3点です。

  • ・水泳は動きの最適解を探すスポーツ
  • ・泳ぎの理想を見つけやすい環境を作る
  • ・記録を上げるためには体と頭の両立が大事

ひとつずつ見ていきましょう。

水泳は動きの最適解を探すスポーツ

水泳は格闘技や対戦競技のように相手の動きによって自分の動きを変えるスポーツではありません。

そして、リレーを除けば基本的にはチームスポーツではないため、全員で戦略を共有して連携するスポーツでもありません。

水の中という平等な環境において、自分自身と向き合って最適な体型を作り、手や足の動きの最適解を見つけ、その最適解を実現させることで前に進んでいきます。

理想の泳ぎと実際の泳ぎの乖離に対してトライ&エラーを繰り返しながら、いかに本番で最高の泳ぎを再現できるかを積み上げていくことを繰り返しているのです。

自分の泳ぎの特徴や自分自身の体格、そして自分にとって得意な泳ぎ方とは何かといった点と向き合える水泳の練習方法を持っておくことは重要と言えます。

泳ぎの理想を見つけやすい環境を作る

動きの最適解を見つけるためにも大事なのは、何が最適解なのかを知ることです。

泳ぐ際、主に手(腕)と足の力で推進力を作って進みます。

競泳の練習用具として日本で最も定番と使われているのは、恐らくスイムパドルのストロークメーカーです。これは板状の丸型パドルで手を純粋に大きくしたような形状です。手の平は大きければ大きいほど水を掻く面積が増えるため、進む力も大きくなりますが、間違った入水やフィニッシュ(水から陸上に出る瞬間)をすると腕に間違った負荷が強くかかったり、推進力が得られなくなるだけでなくなるなどの効果を感覚的に体感しやすくなります。

足ひれ(フィン)に関しても同様のことが言えます。キックの効果を最大化するようにフィンをつけて水を蹴る感覚を体に覚えこませて、

「水を効果的にキックするために足はどうするべきか?」

「どう体を動かした時に一番進みやすいか?」

または「体への負荷が小さく前に進めるか?」といった所に気づかせることができるのです。

パドルを付けることで、腕や手の角度の精度を上げ、どの筋肉を使うのが一番良いのかを考えるきっかけにするのです。

近年の練習用具には上記のように負荷をただ大きくするものだけではなくなりました。水流に違和感を持たせることでフォームの改善を促すものや、むしろ特定部位(例えば手)の負荷を減らすことで特定部位(例えば腕)を徹底して練習させるもの、筋活動にスイッチを入れてそもそも力の入れ方から泳ぎを変えるものなどが増え、多様化しています。この辺りの説明は最後に追記します。

記録を上げるためには体と頭の両立が大事

最適解を見つけるためには何からすべきでしょうか。

ニュースでは「若い世代はタイパ重視」という言葉が使われるようになりましたが、それは大事な考え方です。情報量が多い時代になったからこそ、時間効率(タイムパフォーマンス)を如何に生かして最善策を見つけるのかです。すでに世間的に解決した答えをまた一から発見するために努力するのではなく、世間的に理想とする答えがあるものはいち早く取り入れることで、次の高い段階にいち早く進み、その上の難しくも質の高い結果を出すためにトライを進められるようになります。

一昔前の(今でも)水泳の練習というと1日に何時間も何キロも泳ぎ続けるという練習が全国的に一般的でした。その練習方法によって結果を出してきた選手も多くいるためにそこを否定するわけではありませんが、最近では上記のような考え方から、より理想とする泳ぎをいち早く見つけることで、自分は何を改善すべきかに選手自身に気づいてもらう事で効率的な練習を促すことが出来るのです。

選手の泳ぎを変えるのは、選手自身の気づきです。

改善すべきは手の動きなのか、足の動きなのか、姿勢なのか、筋トレなのか、それとも柔軟性なのか、体のしなりなのか、、、といったように自分の得意分野を伸ばし、弱点を補っていくようにします。

ただ体に負荷をかけるだけでなく、ただの感覚だけでなく、適切な違和感を持たせて考えることで積極的にフォームを改善しにいくのです。

なぜこの考え方が広がったのか

それでは、なぜこの考え方が広がったのかというと、今試合で活躍する若い世代にはSNSの影響が強いと言えます。

今までは長時間の泳ぎ続けることで自分なりの答え(理想の泳ぎ)に気づき自分の試行錯誤で見つけていくことが必要でしたが、今は水泳で結果を残している人たちの情報が数多く手に入ります。

それは国内からだけでなく、海外の情報も、トップ選手の情報もあります。

文字情報や写真だけでなく、動画情報も豊富にあります。

競泳大会は水上からの映像だけでなく、水中動画も増えているし、それに対してとても丁寧で分かりやすい説明をしてくれる水泳に特化したインフルエンサーもいます。

その豊富で良質な情報量の中から、いかに自分が早く成長するのかを的確に選び抜き、多くの選択肢の中から適切に成長するということが可能になりました。

それだけに、自分の頭の中の泳ぎがどんなものなのかを自分自身で理解して、答えまでの道のりを考えて見つけ、そこに対して効率の良い練習ができるようになっているのです。

良質な練習があれば共有されやすくなりました。

ただ、まずは広い選択肢から最適解を見つける。

そういった経緯が水泳の練習用具の注目度を上げている要因かと思われます。

最後に、簡単な説明ではありますが、水泳向け練習用具の種類を見てみましょう。

練習用具の種類

  • ・パドル
  • ・足ひれ
  • ・シュノーケル
  • ・プルブイ
  • ・その他

パドル:腕や手の主体にしたトレーニング

上記しましたように、以前は板状の負荷を高めるタイプが主流でした。

ですが、今は色々なパドルが受け入れられています。

入水の角度をより微細に感じられるようにと作られたSWANSのSA-400

指先に集中するようにと指先サイズで作られたフィンガーパドル

泳ぎにおいて非常に効率良いフォームと言われるハイエルボーのフォームを矯正するように作られたフォアアームフルクラム

手のひらの掻き手の効果を消すことで腕や足で進むことを意識させたピーナッツパドル

指の間に挟んで筋活動を呼び起こし、理想のフォームを作っていくスイムブレース

などなど

本当に多岐にわたります。

パドルについての個性ある商品説明は一度記事にしましたので、そちらをご覧ください。

スイムパドルの違い

(PR)水泳専門店MIHOROでパドルを選ぶ

足ひれ:足や体幹を主体にしたトレーニング

長いフィンから短いフィンがあれば、硬いフィンから柔らかいフィンまで様々あります。

長ければその分だけ水が掴みやすくなり、推進力を得やすくなります。一方で短ければ体への負担が軽くキックを打ちやすくなります。

硬いフィンは強い力で蹴ることで推進力を得やすく、柔らかいフィンは体への負担が少なくキックを打ちやすい。

このように、フィンを一つとっても大きく違うのです。

ハイドロテック2フィンは短いながらもシリコン素材でしなやかであることから理想的な推進力の中で練習をしやすい

DMCフィンは発泡シリコンでダントツで柔らかいことから体への負担も軽く自らの理想のキックを追求しやすい

トライタンフィンは、丸形で作られているために特殊な足の動きの平泳ぎを含めて4泳法で使える。

といったように、フィンに合わせた練習をしやすくあります。

シュノーケル:全体フォームの改善から肺活量まで

AQUASPHEREシュノーケルFOCUS

競泳の練習で使うのは基本的にはセンターマウントシュノーケルという頭の中心に沿って使うタイプです。ダイビングなどでは口から横方向にシュノーケルの管が出ているのと比べると少し変わった形だと思った方もいるかもしれません。

ダイビングでは早く泳ぐことを目的にしていませんから横方向につけることで、視界を広く確保して楽しむのです。その一方で、早くセンターマウントシュノーケルが競泳で愛用されるのはヘッドアップ(息継ぎ)をしなくても泳ぐことができるからです。

手や足の動きに集中することや、左右対称で泳ぐといったことに集中できる環境を作ることができます。

シュノーケルを購入する際に気にした方が良いのは下記の点です。

・逆止弁の有無
・マウスピースの使いやすさ
・替えパーツが購入できるか

まず逆止弁について、水泳ではターン時に水がシュノーケルの中に入ることが日常的にあるため、可能であれば逆止弁の有無は気にした方が良いかもしれません。これがなくても使うことはできますが、シュノーケルの中に入った水を効率よく吐き出すことができるのです。

次にマウスピースの使いやすさの指標として大事なのは自分にあったサイズ(ジュニアであればジュニアサイズ)があるかどうか、噛み口の形状がフィットするかです。

ずっと口をつけておく所のため、意外と大事です。実際にお店で試すことができるわけではありませんので、口コミやお店の人からの評判を聞くのが重要になります。

最後に大事なのが替えパーツがあるかどうかです。マウスピースは強く噛み続けてしまうと早めに劣化しますし、ヘッドパーツのところも持ち運びや保管時に衝撃を与えると破損する可能性があります。買い替えをできるようなものを予め購入するのも大事です。

おススメのシュノーケルとしてAQUASPHEREというメーカーが作ったFOCUSというシュノーケルがあります。これはダイビングのメーカーが競泳用に作ったシュノーケルで、口部分の使いやすさや頭の固定性の良さ、パーツの豊富さなどから非常に使いやすいのです。そのため、競泳のトップ選手の間でも愛用者が多いと聞きます。

その他:それ以外にもまだまだある練習用具一覧

プルブイ

ビート板として手に持って使うことで下半身の動きに集中できることができるようになりますし、プルブイとして足に挟むことで、フラットな姿勢で上半身の動きに集中することもできます。

ゼロポジション水着

水着に自然な浮き感を作ることでゆっくりとした泳ぎでもフラットな姿勢を作り、上半身から下半身に至るまでの自然な泳ぎの改善に繋げることができます。

陸上トレーニング用具

上記で自分の泳ぎに対して何を改善するべきかがわかった段階で陸上のトレーニングをすることで、プールを使えない時間でも効率的な練習へと繋げることができます。

と、長くなりましたがいかがでしたでしょうか。

必ずしも水泳練習具がないといけないとは言いませんが、ひとつの選択肢として水泳練習用具を使える環境を楽しんで練習をしてみてはいかがでしょうか。

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