こんにちは、水泳用品専門店のMIHOROです。
GX SONIC NEOの新作が発表されました。
競泳選手の中でも人気の高いシリーズだからこそ、気になる方も多いのではないでしょうか。
GX SONICシリーズのおさらい
GX SONIC シリーズはこれまで初代GX SONIC、GX SONIC Ⅱ(2)、GX SONIC Ⅲ(3)、GX SONIC Ⅳ(4)、GX SONIC Ⅴ(5)と来て、急に前作でNEOという名前が付けられました。GX SONICシリーズは登場してからずっとフラットスイム(水面に対して並行に泳ぐことが理想的な泳ぎで結果が出る)の理論に対して開発をし続けられています。
業界の中でもトップクラスの硬さ(ホールド性能)を誇るために着用は大変ながらも非常に高い人気を誇り、GX SONIC3以降は日本だけでなく、海外でもアメリカのトップ選手を中心に人気が急上昇しました。そんなGX SONIXシリーズが現段階(2021年まで)で発売されているのは、下記の3点です。
- GX SONIC 5 ST(スプリンター)
- GX SONIC 5 MR(マルチレーサー)
- GX SONIC NEO TF(テクニカルフレックス)
名称からもわかるようにTFモデルはGX SONIC 5のモデルではなく、NEOという別のカテゴライズになります。ちなみに今回発売されるSLとAGも、NEOのSLとNEOのAGという位置付けです。
なぜこのようにTFはGX SONIC 5のグループにしたり、GX SONIC 6と名付けなかったのでしょうか。
情報に敏感なスイマーの間で話題になっているように、TFは形状、素材の配置、FINAマークが同じであることから初代GX SONIC M(モーションタイプ)?と同等品と言われており、その推測がほぼ間違いないと言えます。
そもそもNEOという言葉自体が、「新しい」という意味を持ちながらも、「復活」という意味を持っています。世代を超えた進化ののちに、今のスイマーに世代を超えて改めて提案され直しました。
そのため、5や6という新作ではなく、NEOという名前で復刻されたとも言えます。この辺りの考え方については様々なご意見があると思いますが、この変化について最後に記述いたします。
まずはGX SONICシリーズの新作をご案内いたします。
2.新発売のGX SONIC SLとAGの全体感
GX SONIC5のSTとMRは2022年も販売を継続します。
GX SONIC NEOとしてTFがありましたが、そのTFの型とほぼ同等のものがSL(ストリームライン)
そのTFの型を用いて生地の切り替えを再配置してより動かしやすくしたものがAG(オールジェネレーション)になります・
NEO TFとしての発売は終わり、今後はSLへと入れ替わっていきます。
名称 | 来年度展開 | どんな水着 |
GX SONIC 5 ST (スプリンター) | 継続 | 試合水着の中でもトップクラスの硬さを誇る水着。筋力がある選手、スプリンターに人気 |
GX SONIC 5 MR (マルチレーサー) | 継続 | 4から大幅に動かしやすく改善したモデル |
GX SONIC NEO SL (ストリームライン) | TFの踏襲型 | TFとほぼ同等ながらも撥水性能や、肩ストラップ(レディース)の改善を施した後継モデル |
GX SONIC NEO AG (オールジェネレーション) | TFに生地切り替え追加 | TFの形を踏襲し、生地の切り替えによってより動かしやすくしたモデル |
3.詳細な変更点
最初にも書いたように、GX SONIC NEOシリーズは、泳げる人にとって非常に評判の良かったGX SONIC Mの形状を踏襲しています。
SL(ストリームライン)
SLはTFをほぼ引き継いでいるとも言えますが、マイナーチェンジを施されており、その変化は下記の通りです。
1.撥水性の改善
2.肩ストラップを柔らかく、フラット化(レディース)
AG(オールジェネレーション)
AGは、TFの考え方を踏襲しながらも動かしやすさをさらに改善したタイプ
SLにある撥水性能の向上と、レディースの肩ストラップの改善はこちらのAGにも施されています。
現在はどこの生地が変化したというまだその画像はありませんが、足回りの部分に動かしやすいような生地を再配置されています。
今動かしやすいと評判のTFよりも、より動かしやすい水着が登場したと言えます。
4.GX SONIC シリーズの変化と泳ぎの進化
GX SONICシリーズは、選手の泳ぎ技術の進化とともにあると感じます。
なぜ復刻なのかという、先延ばしした意見も補足して書いてみます。
※色々なスイマーの声、メーカーの声、この両者の考えを聞き、販売店として感じたことを記しています。正解とは限らない、いち意見として読んでいただければ幸いです。
GX SONICシリーズの開発が始まったのは2010年頃で、レーザーレーサー(LR)後(高速水着の規制後)と言われる時期です。
2008年前にレーザーレーサーが衝撃のデビューをし、水着の概念を大きく変えました。しかし、水着の影響力があまりにも大きかったために、2009年を境に水着に対して素材や厚みなど大きく規制が施されました。
フラットスイムを軸にした開発が始まった2010年とは、そういう時代背景があります。
高速水着規制後は、しばらくこの高速水着時代に出た様々な記録は更新されないだろうと言われましたが、この数年でこれらの記録はかなりの勢いで塗り替えられ始めています。
この数年で記録が更新され始めたのは、選手の研鑽がまず何よりも大きかったのは間違いないのですが、そこに寄り添った水着開発にも水泳用品販売店として注目をしておきたいと思います。
初代GX SONIC にはDYNA(硬い)、MOTION(普通)、FIT(柔らかい)という3つのモデルがあり、当時は「水着は硬い方が良い」という概念がまだ強かったためにDYNAを選ぶ人が多かった印象があります
そんな中で自力のあるスイマーの間で注目を徐々に集めていたのがMOTIONでした。NEOはここのMOTIONを引き継いだことになります。
GX SONICシリーズは2、3と続く中で、Ⅲ(3)でその評判を一気に開花させ、霞柄のデザインも印象的だったことから日本では2人に1人が着用するぐらいまで選ばれました。
GX SONIC3登場時はFINAの改定ルールが行われた時期でもあります。その頃に骨盤周りにも裏地を使えるようになり、その新ルールに適合した水着は裏地面積の向上によって骨盤周りの固定性が一気にあがり、それによって浮感が格段に向上しました。
一方で試合水着の中では最も?硬い、キツいと言われているのは、この裏地2枚使いをフル活用したことが原因と言えます。
硬すぎる水着は、鍛えた選手には良いものの、キツすぎると泳ぎに対して負荷をかけすぎてしまうことから逆効果にもなり得ます。
アメリカ選手の間でGX SONIC3の人気が急上昇したのも、アメリカ選手は元々体格が良く、鍛えられた選手が多いからという側面もあります。
そこから日本選手の間では今一度「柔らかい水着も良いのではないか」と、着圧を見直す流れになってきました。
ヨーロッパ選手もカーボンエアをはじめとして柔らかい水着への見直しの機運が高まっていました。
その時代の中で発売されたのがGX SONIC NEO TFです。
GX SONIC NEOが復活した流れは初代GX SONICの評判が良かったことももちろんあると思うのですが、もう一つの忘れたくない側面として、スイマー一人一人の泳ぎのレベルが格段に上がったこともあるのかもしれません。
数年前は試合中にフラットスイムを水着の力で身体を締め付け、強くサポートする事に主眼が置かれていましたが、今はスイマー自身が水着で補正をしなくてもフラットスイムのできる泳ぎを身に着け始めています。
確かにこの数年でフラットスイムの考え方が浸透し、泳ぎの技術への考え方が一気に改善された印象があります。
レーザーレーサーより以前の水着は、いかにスイマーの邪魔をしないかが大事でした。生地面積を減らしたり、撥水素材で水流抵抗を少しでも削れる努力がされていました。
それがレーザーレーサー(高速水着)の登場によって、「水着は加速器(ギア)だ」「なるべく水着で身体を覆った方が良い」という認識になりました。
(※詳細に言えば前作から「体を覆った方が良い」という傾向はありましたが、ここまで世間に強く印象付けたのはレーザーレーサーがキッカケでした。)
その後に競技性を守るために設けられたFINAの新ルール適用によって、水着は選手本来の泳ぎをサポートするためへと変容してきたために、スイマー自身はそれぞれの泳ぎを今一度追求し始めました。
泳ぎの技術に関する情報もその流れに沿っています。
今までは泳ぎの技術を身につけるのに身近なコーチや、泳ぎのデータも紙面や、写真といった静止画や、文字情報といったように、今から考えると数少ない泳ぎのデータを研究することが主流でした。
仮に水泳中継などの動画があっても水中の動きが見えない動画も多かったのです。
それが今では泳ぎを研究するために
- 海外含むトップ選手の動画が増加し、YouTubeなどでいつでも視聴可能
- あらゆる角度の水中動画の増加
- SNS上で水泳好きな人たちによる相互研究
- それぞれの泳ぎに特化した選手のSNS発信
- 個性のある水泳練習用具で局所的な研究や練習ができるように
直ぐに認識できるだけでも、これだけのことが大きく変わってきました。
繰り返しになりますが、初代GX SONICは発売当時の段階で、自力のある選手からは非常に評判の良かった水着だったのも確かです。
こういった背景があることで、今一度注目度が高かったGX SONIC MOTIONが、今の選手に改めて受け入れられる土壌が整ったために復刻したとも考えられます。
「復刻にしては値段が高い」というご意見が多い所に関しては開発に携わっていない私たちでは正しい状況を正確に言えませんが、ポジティブに捉えるならば今の水着開発は水着のサンプルを何回も改良しながら作ることはもちろん大事ですが、複数年に渡って選手の声を聞き開発をし続けること、世界で活躍するトップ選手を長年サポートし続けること対する費用もあることに加え、原材料や海外工場での人件費高騰、海外からの運賃高騰による加工価格の高騰などが同時進行で起こっています。
更にFINAの承認タイミングは1年に1回のタイミングしかないために、スイマーが求める水着をジャストタイミングでリリースするためにはやむを得なかった一面もあるのかもしれません。
ある意味、GX SONICシリーズは数年後に改めて復刻しても通用するぐらい初代からものすごい水着を出し、その後水泳強豪国のアメリカで人気になるほどの物を開発し続けていたと考えると、次の水着ではきっと革新的で良いものが登場するのだと期待したくなりますね笑
下記は過去記事参照GX SONICのナンバリングシリーズの紹介
参照MIZUNO GX SONIC 4 発表、どのような進化をしているのか?
参照ミズノGX SONIC 6: 革新の高速水着、その最新技術と進化の軌跡
Twitter:@mihoroswim
Instagram:@mihoroswim