アスリート・競泳選手

arena 2020年の高速水着・ULTIMATE AQUAFORCE X その真価は?

2019年10月29日

勝負運を上げるという神田明神にあるホールでデサントのトップモデルの最新作が発表されました。

その名も、ULTIMATE AQUAFORCE X

この発表には、2020年東京オリンピックを控えているとあって瀬戸選手をはじめとして、河本選手、長谷川選手、牧野選手、清水選手などアリーナ契約の5選手、そしてメディアもとても多く集まり、大々的な発表となりました。

さて、そこで発表されたULTIMATE AQUAFORCE Xについて説明していきましょう。

ULTIMATE AQUAFORCE X (アルティメットアクアフォースエックス)

前回でアルティメット(最終型)という名前を冠したことで、「次はどうなるんだ!?」と注目が集まる中、ULTIMATEシリーズとしてXが付随されることになりました。

最初は「最終型じゃなかったのか!?」と、ツッコミを入れたくなりましたが、発表の中身を確認してみると、確かにULTIMATE(最終型)をベースに進化していると感じさせられます。

選手の潜在能力を最大限に引き出す水着として前回に引き続きCP(硬い方)とMF(柔らかい方)の2種類が発表されました。

今回注目しておきたいポイントは

  1. ワコールとの共同開発による新技術
  2. MF(柔らかい方)の完全一枚仕様
  3. テープ位置の改善

この3点です。

※説明として前回のモデルと比較するものに関しては現行のULTIMATE AQUAFORCEを(アル1)、ULTIMATE AQUAFORCE Xを(アルX)として表記します。

機能①:ワコールとの共同開発だからこそ実現した、徹底した女性目線の開発

アリーナさんも元々女性用開発に非常に強いメーカーでしたが、ワコールとの共同開発によって、今までのスポーツ業界の発想にはなかった目線で改良がされました。

ここが話題のトップになるぐらいのインパクトがありました。女性にとって今回の変化(進化)は大きいと感じます。

水中では水流抵抗を低減させるために、水着はギュッと強く締め付ける仕様がここ最近の試合用水着(高速水着)では一般的になっていました。始めていました。

それは全身を水着で覆う女性向け水着で特に顕著に現れており、特に胸のあたりを強く締め付けることで、水面に対して凹凸を減らしていました。

当然水流抵抗は減り、泳ぎに対するメリットもあったのですが、その反面で胸周りの強い締め付けからくる上半身の動きにくさ、時には辛さを感じる方も多かったのではないでしょうか。

そこで、搭載されたのがこの技術です。

バストの部分に2枚の別の違う素材を組み込むことで胸の部分の締め付けを以前よりも弱くしながらも、しっかりと体をフラットにさせる技術です。これには女性のブラを作り続けてきたワコールのデータの蓄積やノウハウが込められています。

これは前に腕を出す自由形や背泳ぎはもちろん、横方向に腕を出す平泳ぎやバタフライの時にも効果を発揮するようです。

この後にはアリーナ契約選手である女性選手からの声にもあがっていますが、ここに対しての評価の声が特に良かったようです。

この新機能は女性用のCP、MFともに搭載されています。

機能②:MF(柔らかい方)の完全一枚仕様

瀬戸大也選手はアリーナアドバイザリー契約スタッフとしてこのMFの開発に関わっており、実際に着用を繰り返しながらテストをし、動きやすさを追求する水着として進化しています。

これも実はなかなかすごいものです。以前(アル1)は前面のみが1枚仕様になることで動きやすさを実現していましたが、今回(アルX)は完全1枚布仕様になりました。

まずは男性からですが、

左が新アルXのMF、右が以前のアル1のMFです。横の部分のラインの部分で止まっていたため、全体では一枚布ではなかったのですが、そこもなくなりましたよね。

これによって縫い止まりがなくなり、前から後ろまでが一枚となり、ストレスが非常に少なく、よりよい動きが実現します。

この一枚布仕様は他社ではJakedのJ-katanaやヨーロッパ仕様のモデル、carbon air2で採用されている技術でもあります。
どちらも着やすい水着として非常に評価が高い水着です。

インナー部分はあとでも説明しますが、少し色が濃い部分で、ここには体幹のサポート機能(浮感をサポート)も変わらず付いています。

次に女性向けです。

女性も同様に横での縫い止まりがなくなり、後ろのみの縫製になりました。

一枚布で生地を作るのは実はコストが非常にかかりやすく、本当に凄く贅沢な作りです。

それでも採用されたのには、これによって着心地が格段に変わるからこそで、選手のことを考えた結果の改良だと思います。

機能③:インナーとインナーテープ位置の改善

インナーに関して書く前に、まずは画像を貼ります。

インナーの場所について

画像を見ると大体伝わりますでしょうか。

1枚目の画像はAQUAFORCEシリーズの肝でもある、アップキックサポートを目的とした機能です。これはCPのみが対象となるテープですが、男女共通でY字のグリップテープが入っています。前作は横のテープも含めると男性は3本、女性は2本のテープが入っていましたから、結構大きな変化と言えます。

アリーナのAQUAFORCEシリーズで生まれたアップキックサポートという提案は何度も何度も選手のヒアリング、シミュレーションを経て、より効率よくサポートするように常に変わらず、進化し続けています。

アップキックをサポートするというと、テープを増やすイメージはありますが、それでも前回よりもテープの本数が少なくなっています。
これは何度もシミュレーションを加えられたことによってさらに改良された結果なのだと感じさせられます。

ただ、この辺りは今後スイマーの方々の感想を待ってみたいところです。

2枚目は男性用MF、3枚目は男性用CPです。

2枚目画像の斜線部分がMFのインナーとなっており、これによって骨盤をサポートします。(浮感などの機能)

それに対して男性用CPは、インナーとして前はVゾーン、後ろは全面インナーになっています。これだけ見てもMFとCPでは機能の主眼の違いを感じますね。

それに対して女性は4枚目5枚目の画像を確認してください。画像の黒色の部分が伸縮性の良いニット素材、ネイビーの部分が伸縮性が低めの布帛素材になっています。

胸の部分については、先ほど①で説明しましたワコールとの共同開発によって生まれた物です。

女性側も下半身のインナーの色を見ると、CPの方が前側はそこまで強くないインナーを入れているのがわかります。

そして次にキャップとゴーグルです。

新作キャップ:渦巻き?軸を作るキャップ

キャップがなかなかに凄い印象です。前の線はおそらくデザインですが、それより気になるのは頭の部分。

この見た目のインパクトすごいですよね。

実際に見てわかるぐらいに凹凸があります。

SpeedoのPureシリーズでも提案があったように、水流抵抗はただ減らすよりも、渦を味方につけることが良いとされています。

この凹凸もその考え方に基づいて作られたものです。

実際に泳いだ感想を発表の当日、川本武史選手もこのように語っていました。

「すごいキャップができた。頭頂部の頂点の部分から軸ができたような感覚。ドルフィンキックが打ちやすい」

シリコンキャップにこの渦があることで頭頂部を中心にして体の軸ができるような感覚となるようです。

入水時やターンの時の頭の位置確認にも使えそうな気がします。

◆ゴーグルSWiFTに強力なパーツが追加

今回競泳向けに新しいゴーグルは出ませんが、AQUAFORCE SWiFTに装着可能なサイドバーが発売されます。

色は日の丸と同じ色、ジャパンカラーという感じでしょうか。

サイドバーがあることで入水時やターンの時など、高速時はストラップがばたつきやめくれを防ぐことができます。

日本人競泳選手に非常に人気の高いBladeもサイドバーのついたもの(Blade ZERO)の人気が急速に高まりつつありますが、その人気ぶりから見てサイドバーがいかに効果的であることがわかります。

・・・

さて、いかがでしょうか。

1年を切った東京五輪に向けて、各社の動きが活発になる中、アリーナさんではとても良いものが出来上がったのではないでしょうか。

◆各選手の声

※まだ試合では使っていない状態の声ですので、現時点の声としてご参考ください。

・瀬戸大也選手(MF着用)
僕が水着に求めるのは、動きやすさです。これを前の水着の時から大事にしてきました。
他のボールを使うような競技に比べて水着、キャップ、ゴーグル、この3つが非常に大事です。
新しい水着はとにかく動きやすい。
司会「軽さはどうですか?」
前回も軽いと思ったのですが、今回はさらに軽い、パワーアップしていました。

・長谷川涼香選手(MF着用)
密着するし、この水着は腰が引き締まっている。
司会「肩の負担はどうでしょうか?」
前の水着だと1本レースをするだけで次の日に疲労が残りやすいのですが、今回の水着は疲労が残りませんでした。
女子選手にはありがたい水着でした。

・川本武史選手(CP着用)
後半の失速したときに足を引き揚げてくれる。自分の改善したいところを、よりサポートしてくれる
自分の武器はドルフィンキックなので、その武器を生かしてくれるのがこの水着だと思う。
キャップ・・・すごいキャップができた。頭頂部の頂点の部分から軸ができたような感覚。→体の軸ができる感覚

・牧野紘子選手(CP着用)
キックが打ちやすいと感じました。ドルフィンが打ちやすい。
泳いでいて足のサポートがしっかりされていると感じました。

・清水紘子選手(CP着用)
レース水着に個人的に欲しいのが、体の浮き感。後ろのテープがあることによって、いつもより足が上がっている感覚。
平泳ぎ、クロール個人メドレーの後半で足を前に出す癖があるけれど、それがテープによって引き揚げてくれる。
胸の部分の抵抗がなくなるように作られているのに、締め付けられているわけではない。自然体で泳げる。(今まではぎゅっと締め付けられていた)一番感じるのが水に入ったストリームラインの瞬間、シューッと入るような感覚があった。

いかがでしょうか。

瀬戸選手は「前回大会をこの水着とキャップで出ていたら世界記録が出たかも」と言い、会場を沸かせていましたが、選手から概ね好評なのが伝わってきました。

今回は選手の声もしっかりと届けられたために、発売前から非常にわかりやすいものになったように思います。

デサント直営店では1月1日から発売開始

競泳専門などのお店の展開は1月11日から発売開始となります。

前回のように試着会は予定されているとのことですので、楽しみにしましょう。

この記事を書かせていただいた水泳専門店MIHOROでも1月11日先行発売分の予約販売が開始しますので、最後にリンクをご紹介させてください。

ULTIMATE
AQUAFORCE X
男性用CP女性用CP男性用MF女性用MF
画像
硬さ硬い硬い柔らかい柔らかい
テープY字Y字なしなし
生地完全1枚布完全1枚布
裏地前身V字
後ろ全面
※素材未確認
前身ニット
後ろ布帛
骨盤周り
※素材未確認
骨盤周り布帛
胸下に布帛
胸上にニット
購入
発売日
MIHOROMIHOROMIHOROMIHORO
売り切れの際はリンク先がなくなる場合があります。ご理解ください。

※生産背景などで、全体の発売日が若干遅れる場合があります。ご注意ください。

予約限定グッズもありますので、もしよろしければお越しください。

この水着で気になったことや、ご不明な点、アドバイスなどありましたら、もし良かったらコメント欄に記入していってくださいね。

着用された方からの感想

(2019.12.20追加分)

MF…従来品よりもXの方がより動きやすい、そして腰が安定するという声が多いようです。
カーボン エア スクエアが一枚布(ワンパネル)になった事で着心地は大幅に改善しているのですが、それによって着圧に少し物足りなさを感じる方もいらっしゃると聞きましたが、
そういった方も新MFへの評価が非常に高いです。
機能的にもカーボンエア2よりも新MFの評価が高そうですね。

(しかも日本モデルだから手が届きやすいお値段)

CPについても、今までの選手からの評価ももちろん高いのですが、ミズノGXのSTをいつも履いている選手からも新CPはホールド感とキックの打ちやすさへの評価がとても高いようです。
ただ、新CPでは前身が少しやわらかい為、ミズノさんのSTのようなガチガチのホールド感を同じぐらい求める方には少し緩く感じる方もいらっしゃるかもしれません。


(2019.12.20追加分2)

Twitterより:CPはサイドに入ったYのバンドのおかげで水着のズレがなくなると共に腰から足が固定されるので特にブレの場合キャッチの側面で発生する下半身の沈みを最小限に抑えてくれる効果がありますね! あと、よりフラットになるので1掻き1蹴りの時により進む感じになります!


(2019.12.20追加分3)

CP着用したほかのブレスイマーより:「1掻き1蹴りで(ドルフィン打った後に完全にフラットになれ)下手したらドルフィンを打った後に15m超えるかも?」という感想があったそうです。


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