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【インタビュー】ゴーグルの雄・山本光学これまでの100年と、これから

こんにちは、SWIMSTATION水着特派員、MIHOROの今村です。

今日はSWANSブランドを擁する山本光学さんに取材に来ました。

非常に多くのスイムゴーグルを生み出す山本光学さんはどんな歴史をたどって今に至るのか。そこに迫ってみます。

今日お話をお伺いするのは、山本光学株式会社 スポーツ第2事業部 営業部 大阪営業課の福島さんと濱野さんのおふたりです。

山本光学の創業時

ー「今日はよろしくお願いします。早速ですが、山本光学さんの歴史は非常に長く最近100年を超えたと聞きました。実際には今どれぐらいの創業年になるのでしょうか?」ー

山本光学は1911年戦前に創業していますので、今年で107年となりました。

ー「その当時からスイムゴーグルの製造をされていたのでしょうか?」ー

いえ、創業時はメガネのレンズ加工業として始まっています。

当時の日本は今のように整備された道路は数少なかった時代ですから塵なども多く、その上、多くの日本人が世界各地に出向く人にも過酷な環境が多かったことから防塵のアイテムが求められていました。
そこでレンズ加工の技術を持って防塵眼鏡を作ったことで多くの人に山本光学の前身の会社が知られるようになっていきました。

ー「なるほど、興味深いですね。一般的なメガネの加工としてではなく、創業当時から防塵という目を守る製品で会社が成長してきたわけですね。」ー

そうです。その防塵技術を使った眼鏡によって国内外で活躍する方々に届けてきました。

水中ゴーグルの始まり

ー「山本光学の技術の根幹はそこから始まっているのですね。防塵メガネによって会社が成長した後のことについても教えてください。」ー

戦前、戦時は防塵レンズを作ってきたのですが、戦後はその技術を使って水中ゴーグルを作ることになります。

ー「なるほど、防塵として培った目を守る技術を防水技術に応用したわけですね。戦後すぐに水中ゴーグルを作ったのですか?それは水泳でゴーグルが求められていたということでしょうか。」ー

日本の水泳が非常に強かった時代ではありますが、その当時水泳でスイミングゴーグルを着用することは基本的にありませんでした。

戦後は食料に困っていた時代です。そんな時に使い勝手の良い水中ゴーグルを届けることで、海女さんなど、海に潜る時に重宝していただいたと聞いています。

水中ゴーグルの技術を横展開

その後は日本の経済成長とともに様々な形のゴーグルが求められ、自分たちは目を守るという防塵や水中ゴーグルで培った技術の根幹を数多くの商品へと活かしてきました。

・オートバイが市場に出回ったことで改めて防塵のゴーグルを作り

・ファッションの流れでデザイン性を考慮したサングラスを作り

・オートレース人気の流れで空気抵抗も考えたレース用のゴーグルを作り

・スキーブームの流れでデザイン性にも耐久性にも気を使ったスキーゴーグルを作る

・スイミングが普及する流れで水の抵抗力に負けないゴーグルも作る

このようにして、山本光学はこれまで培った技術を元に、様々なスポーツにあった技術を取り入れながら成長してきました。

ゴーグルに特化した技術進化

ー「目を護るというところはブレずに、柔軟なフットワークで新たな市場参入をし続けてきたわけですね。広げた後は今につながるような技術を次々と投入していくというな流れでしょうか?」ー

そうです。
それぞれの時代やそれぞれのスポーツにあったニーズが当然あります。
目を護るというところは一貫していますが、スポーツや用途によってその違いを柔軟に取り入れていきました。
あげるとかなりの数になるのですが、

・曇り止め技術をスキーゴーグルへ応用させ、快適性と視認性の向上

・より極寒環境でも使えるゴーグル技術の改善

・産業用ゴーグルではレーザー光をカットするレンズの開発

・マラソンでは軽くて縦の動きをしても顔に優しくフィットする技術を洗練

・一般のサングラスではデザイン性を流行に合わせて提案していく

・釣り人に向けたサングラスでは偏光レンズの技術を導入

・水泳では水流抵抗の軽減だけでなく付け心地なども追求する

などでしょうか。


SWANSの最新技術を使ったゴーグル

※水面のギラギラをカットする偏光レンズ。レンズを通すと水上から水の中が見えるようになる。

水泳向けと産業用では必要な技術は全く違いますから、目を護るという一点だけでもやるべきことは非常に多岐に渡ります。

ー「人の目を護るという点において徹底的に追求し続け、技術を磨き、そして新たな技術の取り入れを積極的に行ってきたわけですね。
改めてまとめてみると老舗だからこそ、変化し続けているのだと感じさせられます。ここ最近の水泳でもそういった商品がかなりありましたよね。」ー

ここ数年の水泳の所をあげてみると

・陸上のサングラスの形状を取り入れたスイミングゴーグルの開発(下記左:Warrior)

・スキーのタフネスさを取り入れたゴーグルの開発(下記右:ASCENDER)

といったように、目を護るという一貫した道で磨いてきたそれぞれのスポーツで培った技術を、別のスポーツや産業で応用することも多々あります。

ー「ファッションゴーグルやマラソンなどのデザイン性を取り入れるのも面白い発想ですよね。
それにしてもSWANSさんは一貫した軸を持ちながらも時代の変化への対応力が際立ちますね。SWANSブランドのカタログ一つとってもそうなのですが、ユーザーさんが困らないようにと、日々アップデートし続けていてカタログが本当に見やすいんですよね。細かな使い方や見え方、「こんな情報あるといいな」がすべて網羅されている。私たちもホームページを作る際に、非常に参考にさせてもらっています。ユーザーさんやスイマーの方々とコミュニケーションをとりながら商品を作っていくことも多いからこそだと思いますが、ユーザーさんの声を元にできた象徴的な商品などはありますでしょうか?」―

そうですね。。。例えば、視覚障がい者が使うゴーグル(通称:ブラックゴーグル)は協会の方からでた生の声を元に製品化しています。

S/SB/SM11クラスの選手は大会に出場する際、公平性を保つために、光を通さないゴーグルをつけることが義務付けられています。

ですが、当時はそういったゴーグルがしっかりと用意されていなかったために、光を通さないようにするためゴーグルにガムテープを貼ったりマジックで色を塗ったりしていたと聞きました。

それであれば、「SWANSの今のゴーグルの型と、今の山本光学で使っているこの材料を使えばできるのではないか?」という発想が出て、この光を通さないゴーグル(通称:ブラックゴーグル)を製品化しました。

ー「ブラックゴーグルは私たちも色んな方に届ける過程の中で関わらせてもらっていますが、このゴーグルのように多くの人が使うわけではない製品を、山本光学さんのような大きな会社がゴーグルを作るということに、驚きというか、その真摯な姿勢をすごく感じます。」ー

ありがとうございます。

世の中に必要なものを模索した結果生まれて、それが喜んで受け入れてもらえるのなら光栄です。

そのブラックゴーグルが多くの選手に愛用をしていただいたことで、SWANSブランドとして国際パラリンピック連盟とその傘下のワールドパラスイミングと視覚障がい選手用のブラックゴーグルの公式サプライヤーとしてパートナーシップ契約を締結することとなりました。

ー「いやー、ほんと素敵な試みですよね。その試みを私たちも応援しています。

さて、そんなユーザーさんと共に歩むSWANSさんですが、近々発売していくゴーグルの中で取り組んだ新しい試みを教えていただけないでしょうか。」ー

このASCENDERに新たに取り入れた技術などは面白いかもしれません。

実はこのゴーグル紫外線をによって取り入れる明るさをかえることができます。

ー「え?どういうことでしょうか?」ー

ちょっと見ていてください。

(※みるみる内にスモークになっていくゴーグル)

ー「おお、これは面白いですね!具体的にどのような使い方をするのでしょうか?」ー

今は弱いUVライトを使っていますが、外に持っていけばすぐにスモークに変わります。

だから外に持っていくとスモークゴーグルになり、屋内ではクリアゴーグルになるわけです。

ー「なるほど、これは面白いですね。オープンウォーターの人気も非常に高まっていますから、このゴーグルのファンも一気に増えそうです。
今日は非常に面白い話をありがとうございました。」ー

ありがとうございました。

スポーツ第2事業部 営業部 大阪営業課 福島氏(左) 濱野氏(右)

あとがき:山本光学とは

本文中にも書いたように、山本光学という会社は防塵レンズの加工に始まり、目を護るという点おいてその技術をひたすら磨いてきました。
スキー、ランニング、ゴルフ、産業用などそのフィールドに違いはあれど、その成長の過程において目を護るということに関して一切のブレがありません。
しかもそれぞれのスポーツやフィールドで得られた知識や技術を柔軟に使っている。
そこに技術の積み重ねが感じられます。そして、山本光学さんの歴史の成長につながる商品が生まれた陰には、必ず多くの人たちの「困った」を解決することに注がれた結果で生まれています。

・・創業から107年の重み・・

日本では起業をしたら1年続くのが半分で、10年続くのが5%、30年後まで残るのは0.01%もないと言われています。
そんな中で100年以上生き抜いてきた企業に息づく老舗が守ってきた文化、そして挑戦し続けてきた企業の重みをひしひしと感じました。
日本が誇るゴーグルメーカーの山本光学の技術は確かなものです。

スポーツのみならず、世界の第一線で活躍する選手も愛用するゴーグルには、確かな価値を感じさせてくれます。
是非ともこれからもSWANSのゴーグルから発売されるゴーグルを楽しみにしましょう。

山本光学(SWANS)公式サイトはこちら

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