アスリート・競泳選手

2019年大本命高速水着・ULTIMATE AQUAFORCEの真価と機能

さて、2018年12月3日arenaから高速水着新作が発表されましたね。

突如として発表されたこの水着の真価を知りたいという方も多いのではないでしょうか。

そこで、今日はこの水着の事についてデサントジャパン株式会社 第一部門アリーナマーケティング部 MD課の小林江舞さんにお話をお伺いします。

今日はよろしくお願いします。

小林さんは競泳もされていて、何度かこの水着でも試泳されたとのことで、その辺りの生の声も聞いてみたいと思います。

ULTIMATE(アルティメット)のコンセプト

―「今回12月3日に一斉に情報が解禁になったこの新作高速水着について、ULTIMATEという名前にも込められたこの新しいシリーズのコンセプトを教えてください。」―

ULTIMATE AQUAFORCE はその名前にもある通り、最終型(アルティメット)を意味する言葉です。アクアフォースシリーズをアップデートする中で、最終型の名を冠して進化として誕生しました。

―「アクアフォースシリーズはインフィニティ(無限大の意)という名を冠した時に、アップキック(後ろ方向のキック)サポートという革新的な提案が生まれました。

その後のアクアフォース ライトニングでは生地が大幅に改良され、、そのコンセプトを一気に進化していましたよね。ULTIMATEになる事で具体的にはどのように変わったのでしょうか?」―

アリーナのアクアフォースシリーズでは、インフィニティの頃からアップキックのサポートを中心にして、選手の声を取り入れながら各所を進化させてきました。

その上で、今回のULTIMATEでは、選手の声をヒアリングしていった結果、MF(MOTION FREE)とCP(CONTROL POSITION)の2種類でそれぞれ違う進化をしました。

ULITIMATE AQUAFORCE3つの進化

―「それではまずは柔らかい方のMFを教えてください。このMFはアクアフォースライトニングのフレックスタイプ(ピンク色)の後継モデルにあたるようですが、どのような水着かという点、そして進化した所を教えてください。」―

MFは、泳ぎ易さ、動きやすさということを追求してきました。

そこを追求した結果、できた変化は大きく分けてこの3つです。

1.水着の軽量化
2.生地の一枚構造とテープの改良
3.水着の裏地がセパレート構造

進化1・・・水着の軽量化

水着の軽量化について、今までのアクアフォースよりもさらに20%軽量化させています。アクアフォース史上の中でも最も軽い水着になりました。

―「・・・20%ですか!以前のライトニングの生地でもかなり軽くしなやかな伸びが印象的でしたが、さらに軽量化ができたのですね。それだけ水着が軽量化されると生地の伸縮性も変わってきそうです。実際触って比べてみても、その伸縮性の違いがわかり、伸びが心地よいです。この生地がライトニングで初登場した時も驚きました。凄いの一言です。さて、2点目は生地の一枚構造の所を教えて下さい。」―

進化2・・・水着の一枚構造

生地の一枚構造化についてですが

水着に限らず洋服も、通常は複数の生地を縫い合わせて使っています。

アリーナの水着でも普通は足のパーツや前身頃のパーツなどを張り合わせて使っていますが、今回このMFではそれを大きく変えました。

ご覧のように前身を一枚の大きな生地で構成しました。

男性であればウエストから裾まで、女性だと胸元から足元までが一枚のつなぎ目のない生地を使っています。

このように一枚の生地で構成されることによって、縫製部分のに引っ張られることもなく、縦横方向に自然に伸びるようになり、動かしやすくなります。

―「ええっ、生地面積が小さめの男性だけでなく、女性も一枚にしたのですか!?・・・水着生産背景を知っていると、かなりの挑戦的な変化ですね。

一枚の生地を大きく使うことは、生産も難しくなるし、生産枚数も必然的に少なくなる。だから生産にもそれだけのコストも手間も自然とかかってしまうから、一枚布で構成された水着はあまり多く採用されていませんよね。」―

そうですね。それでもこの着心地を重視したMFモデルでは一枚布にすることのメリットをしっかりと感じて頂ける重要な要素だったため、この1枚生地にこだわって採用しています。

レーザー圧着した部分や縫製のある部分って、水着とは異素材だから、そこで伸縮が変わってしまうんですよね。

動きやすさを追求するための、一枚生地です。

―「縫製よりもレーザーの方が表面が滑らかになるため採用される例は最近はよくありましたが、そもそもその継ぎ目をなくしてしまうとは。。。(笑)

進化3・・・裏地構造とテープの進化

さて、3点目の裏地構造とテープの進化についてはどのような変化をしたのでしょうか。」―

この裏地構造の変化ですが、これはレディース向けモデルにおける変化です。

今まで裏地は、胸から前身頃に至るまで、一枚の特殊な形状の裏地がついていました。

それによって泳ぎの体幹のサポートなどを行なっていました。

ですが、このULTIMATEではその胸部分の裏地を左右で別々のパーツにして体のサポートを残したままで、胸の部分を左右にセパレートでインナーを配置

さらに、ボトム部分の裏地には胸の部分とは違うアクアフォース フィルム12を採用しています。

これによって、ストロークをする時の全身の突っ張りなどがなくなり

人の自然な動きに対応をできるようになりました。

―「確かにこの胸の部分が左右に分かれるだけで、手の広げやすさが格段に変わりそうですね。

アップキックのサポートを維持しながらも、とことん動きやすさや着やすさを追求したということですね。」―

ホームページでは選手の感想も掲載されていますが、選手の皆さんはこのMFに対して生地が凄く柔らかい、動きやすいという感想を残されているようです。

小林さんも実際に着用して泳がれたとのことですが、もしよかったら個人的な感覚も教えていただけないでしょうか。

着心地が非常に良いというか、まるで着ているのを忘れるかのような感覚というのをまず実感しました。

今発売されている CARBON AIRも、とても優れた水着ですが、それに比べても生地が心地よく伸縮し、自在に泳げたのが印象的でした。

―「CARBON AIRは海外仕様を日本にもってきていますが、このMFは日本での開発が行われている。より日本人の体型に最適化されていそうです。

それにしても、Lightning の頃から比べると全く別物への進化が一気に行われたという感じですね。今まで高速水着にはまだ早いと考えている人には非常に適した水着かもしれません。

それでは次にCP(CONTROL POSITION)について教えてください。こちらは今まででいう、アクアフォースライトニング POWERタイプの後継ということですが、どのような変化をしたのでしょうか?」―

このCPは以前のパワータイプに比べて、アップキック(人が苦手とされる後ろ方向のキック)のサポートを強化しながらも着やすさを同時に追求しました。

そのため、実は男女で水着の作り(カッティング)を少し変えています。

―「なんと。今までインナーの違いなどで男女の違いはありましたが、カッティングまで変えるとなると、かかる手間が膨大になります。それゆえに機能面において男女を分けるというのは非常に珍しいですね。」―

男性と女性では得意とする泳ぎや動き、筋肉量は違ってきます。選手の声を何度も聞く中で、女性に必要な強度と男性に求められる強度が違ってきます。

だからこそ、男女でそれぞれパワーテープの配置や働きなどを変えて構成しています。

アップキックのサポートのために、このお尻の部分のパワーテープがあります。今まで縦に左右で一本ずつ入っていたパワーテープによるサポートが、女性用のULTIMATEでは今まで通りの臀部からハムストリングにかけての1本と、外側に1本を追加し、合計左右4本のパワーテープが入っています。これによってアップキックをサポートを強化しました。

それに対して男性は従来からある臀部からハムストリングへのパワーテープを1本配置した上で、その内側に一本、外側にも1本のパワーテープを入れることで、左右合計で6本のパワーテープが配置されました。

これによって、今までアップキックがより効率的にでき、疲労時に下がってきやすい足をレース後半まで保たせられる水着となりました。

―「これまた大きな変化ですね。アリーナさんがインフィニティのコンセプトを初めて発表された時は”なるほど!そうきたかー”と驚きました。当時はアップキックのサポートというのは革新的な提案で、私たちにとって期待を遥かに超えていた事もあって今でも記憶に残っています。その頃から培ってきたノウハウである得意分野でもあったアップキックをさらに進化させてきたわけですね。
ただ、どうしても心配点があります。パワーテープが今までより多く入るとその分着づらさが出てきそうですが、そんなことはないものでしょうか?」―

そうですね。それには先ほどのMFでも追求してきた着やすさの技術とアイデアがCPにも活かされています。

前身頃には先ほども出てきた軽量生地であるアクアフォースFフィルムを配置しており、大腿部も動かしやすいようになっています。

さらに、女性ULTIMATEには裏地が3つのパーツに分かれているため、インナーによる突っ張りが無いように作っています。

これにより胸周りからお腹周りへの動きが制限されることなくなり、手が開きやすく、全身で動きやすい構造になっています。

―「なるほど。選手の動きやすさを徹底的に追求したMFのノウハウと、速さを追求したCPの技術とノウハウがうまく合致しているわけですね。以前のパワータイプは女性には少し選びにくい固さだった部分もあったかもしれないのですが、アリーナの公式ウェブサイトでも、何人かの女性選手がこのCPに興味を持たれているのも印象的です。」―

そうですね。本番でどの水着を選ぶのかという所はもちろん選手が選ぶことですので現時点ではわかりませんが、それでも、今までCARBON AIR を着用していた清水選手や、Lightning FLEXタイプを着用していた牧野選手が、このCPに興味を持ってくれているのは大きな変化だと思います。

―「確かに選手が好む水着への変化は、アルティメットで行われた進化と変化をしっかりと証明してくれているかのように感じます。

動きやすさを徹底的に追求したMFと、ボディーポジションをしっかりコントロールするためにアップキックも強化したCP

まだまだどちらも今後様々な選手が着用していくのが楽しみですね。

今日取材をありがとうございました。」―

まとめと感想

これまで高速水着の新作の話を聞きたいと、各メーカーに突撃取材し続けているのですが、それぞれのメーカーの理論に則って「選手を個性を活かした速さをサポートをする」という熱い思いにブレがなく、どのブランドも選手と二人三脚で丁寧に挑む姿が印象的でした。

類い稀な技術と分析力によって前方向と後ろ方向のサポートという進化したミズノに対して、後ろ方向のサポートを強化しつつ、選手が動きやすい繊細な部分をも進化させたアリーナ。

かなり大きな違いですが、この違いの進化こそが、それぞれのブランドの個性であり、強さなのだとも思います。

2008年頃にレーザー・レーサーの衝撃によって競泳水着のコンセプトがガラリと変わる出来事があり、当時は選手ではなく高速水着ばかりに注目が集まってしまっていました。

北京2008年の前後ですね。少し異様ともなってしまった状況から様々なルールや規則が設けられ、10年が経過しました。水着に過度の注目が集まったあの当時に比べると、今の高速水着は選手にしっかりと向き合っています。

選手に相談し、声を取り入れていく。その過程で各メーカーは何十、何百では数え切れないほどの挑戦、失敗、修正をしたのだと思います。

選手の声がしっかりと反映された水着が出来上がり、そして全国各地のスイマーに届けられていく。

高速水着は非常に高価な価格帯ですが、高価な価格帯になるだけの時間も技術も、人智を尽くして作り続けられています。

今回発表されたアルティメット(最終型)と名付けられたその名前には、arenaの並ならぬ意志を感じます。

予約販売は開始していますが、本発売は1月1日からとのことです。

世界のトップ選手と、高い技術力が込められた水着を、ぜひ楽しみにしましょう。

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